一粒にかける情熱とこだわり―― TOHOシネマズのポップコーン【前編】

一粒にかける情熱とこだわり―― TOHOシネマズのポップコーン【前編】

2026年09月08日

映画館のロビーに足を踏み入れた瞬間、ふわっと漂うポップコーンの香りに、胸の高鳴りを覚える人も多いのではないでしょうか。
お客様にそんな特別な体験を届けるために、TOHOシネマズはポップコーンを自社で開発しています。原料となるコーンの選定から、食感や味のバランスまで、細かな部分にこだわりながら、並々ならぬ情熱を注いで試行錯誤を重ねてきました。
なぜ、ここまでポップコーンを大切にするのでしょうか。その理由と開発の舞台裏について、商品開発部長の清水敦さんに話を聞きました。

清水 敦

TOHOシネマズ株式会社
営業本部 商品開発部長

清水 敦

しみず あつし

非日常の世界への扉を開ける、香りのヒミツ

――映画館に入ってポップコーンの香りがすると、一気に気持ちが高まります。映画館ならではの体験ですよね。

そう言っていただけると嬉しいです。ポップコーンの香りは、お客様の気持ちを日常から「映画の世界」へとエスコートするスイッチだと思っています。
例えば、高級ホテルに訪れると、洗練された香りに包まれて、すっと非日常の世界へ誘われますよね。TOHOシネマズにとって、それがポップコーンの香りです。「ここからは日常を忘れて、映画の世界に没入しよう!」と、自然と映画モードに気持ちが切り替わって頂けるのではないでしょうか。

――あの香りを届けるために、どのような工夫をしているのでしょうか?

何よりも「香り立ち」にこだわっています。TOHOシネマズのポップコーンは、全国すべての映画館で専用の機械を使い、その場で出来たてを提供しています。さらにオイルも、コーンが弾ける瞬間の香りが最も豊かに広がるように独自に開発しています。

ポンポンと音を立てながら目の前で弾けるライブ感と、そこから立ち上る熱気、ふわっと広がる香ばしさ。この楽しさとおいしさは、映画館だからこそお届けできる特別な価値だと思っています。

食べた瞬間の「サクッ」を追求。定番の味も進化を続ける

――TOHOシネマズのポップコーンには、根強いファンも多いですね。おいしさの秘密は何ですか?

私たちが一番大事にしているのは、食感です。ポップコーンはとてもシンプルなお菓子ですが、原料の品種や弾け方によって、口当たりは驚くほど変わります。私たちは口に運んだ瞬間の軽やかでサクサクとしたクリスピー感や、噛みしめたときに心地よいクランチ感を追求してきました。

その食感をつくるために、原料のコーン選びからこだわっています。コーンは品種によって、弾けた時の大きさや形、食感がそれぞれ違うんです。生産地のメーカーとやり取りを重ね、弾けたときに大きくきれいに花開く「バタフライ型」の中から、私たちが目指す味や食感に合う最高の品種を選んでいます。

ポップコーンの原料となるトウモロコシ

――定番人気と言えば、「塩味」と「キャラメル味」。それぞれどんな工夫があるのでしょうか?

塩味は昔からの定番なので、「映画館に来たらコレ!」というお客様の期待も大きいんです。だから食べ進めるうちに、「あれ、この一粒、味がしないな……」なんて残念な気持ちにさせてしまうことは絶対にしたくありません。

そこで、最後の一粒まで変わらないおいしさを楽しんでいただけるように、「特別な塩」を採用しています。メーカーと相談しながら、全体へ均一に行き渡るよう開発した塩です。

キャラメル味も同じで、どの一粒を食べても濃厚で、カリッと香ばしい味わいを届けるため、2025年に大きくリニューアルしました。

以前はどうしてもコーティングにムラが出てしまうのが課題だったんです。キャラメルを増やせば焦げやすく、均一にまとわせるのが難しい。何度試してもうまくいかず、開発メンバーと試行錯誤を重ねました。

そこで発想を変え、キャラメル味専用のオイルをゼロから開発することにしたんです。その結果、ムラがなく、美しい琥珀色の輝きとクランチ感を最後の一粒まで楽しめる、究極のキャラメル味が完成しました。お客様からもとても好評で、私たちの自信作になっています。

行くたびに新しい味と出会う。選ぶ楽しさを、映画館の思い出に

――定番以外にも、多彩なフレーバーが揃っていますね。何かきっかけがあったのでしょうか?

大きな転機になったのは2014年、大手ポップコーンメーカーであるジャパンフリトレー様との協業を始めたことです。お客様に「TOHOシネマズに行くと、今まで食べたことがない新しい味がある!」というワクワク感を届けたいと思い、いろいろなフレーバーの開発に力を入れてきました。

当初は、味の選択肢を増やすことで、定番の塩味やキャラメル味の売上が落ちるのではないかという不安もありました。でも、実際はその逆。お客様が「今日はこの味にしようかな」「この映画にはこっちが合いそう」と選ぶ時間そのものを楽しんでくださったんです。

最近では、「次はこんな味を食べたい」「以前の期間限定フレーバーを復活させてほしい」といった声もいただきます。そうした声は、開発に携わる私たちにとって本当に励みになっています。劇場へ行くたびに新しい味と出会えることが、映画館に足を運ぶ楽しみの一つになればうれしいですね。

ポップコーン好きに愛される大ヒット作、大容量の「パーティーポップ」と「パーティーポップ W(ダブル)」

映画館を飛び出して、日常にも広がるポップコーンの幸せ

――最近は、子ども向けの取り組みや、まさかの「Uber Eats」でのデリバリーなども展開していますね。

私たちが一貫して目指しているのは、ポップコーンを通じて多くの人に笑顔を届けることです。味へのこだわりを大切にしながら、おいしさ以外の面でもお客様との接点を広げたい。そんな思いから、さまざまな取り組みにチャレンジしています。

例えば、誕生月のお子様にポップコーンをプレゼントするキャンペーン。映画館でポップコーンを食べる体験が、子どもたちの楽しい記憶や誰かを笑顔にする原体験になってほしいという願いを込めています。また、国連世界食糧計画(WFP)の支援活動にも参加していて、対象商品を購入いただくと、売上の一部が支援を必要とする子どもたちの学校給食に役立てられます。「おいしい」の先でちょっと良いことができる、そんなあたたかい循環が生まれたらと思っています。

Uber Eats様とのコラボでデリバリーを始めたことも大きな挑戦でした。劇場の外でもニーズがあるのか、正直、未知数でしたが、蓋を開けてみると驚くほどの反響があったんです。先日は、あるアイドルの方が「Uber Eatsで注文しました!」とおっしゃっていて。映画館を離れても、TOHOシネマズのポップコーンを特別なものとして楽しんでくださっているんだなと胸が熱くなりました。

国連WFP協会のレッドキャンペーン対象商品になっている、塩味のポップコーン

グランプリ受賞を追い風に。「ポップコーン目当て」の映画館へ

――最後に、清水さんが思い描く「ポップコーンの未来」を教えてください。

ありがたいことに、TOHOシネマズのポップコーンは2026年5月、食のプロが審査する「ジャパン・フード・セレクション」で最高評価のグランプリを受賞しました。これまで重ねてきた試行錯誤がクオリティとして認められたことは、大きな自信と励みになっています。

この喜びを原動力に、これから実現したいのが、ポップコーンを映画のお供にとどまらせず、日常に広がる新しいスナック文化へと育てることです。
今はまだ、「映画を観るついでにポップコーンを買う」という方がほとんどだと思います。でも将来は、映画を観ない日にも「TOHOシネマズのポップコーンを食べたい」と、映画館へ立ち寄ってもらえるようにしたい。日常の中で親しまれるスナックに育てていきたいですね。

そして、今、ポップコーンを楽しんでいる方がいつか親になり、自分のお子さんに「ここのポップコーンは本当においしいんだよ」と手渡してくれる。そんなふうに、世代をつないでいく味になれたら最高です。
映画館で過ごす特別な時間を彩りながら、日常のさまざまな場面にも笑顔を届けていく。そんなポップコーンを目指して、これからもおいしさと楽しさを追求していきます。

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